ニンジンスキーに捧ぐ

れっつキモヲタライフ

エルサリオン

ネーム帳にがりがり描いたのを上部少し修正してグレーでぬりぬりしますた。



私はこのところ、弟が夜中に家をこそと抜け出しどこかへ行くのを薄々と感じ取っていた。
気になって仕方がないので、とうとうある日の晩、奴のあとをつけた。

なんと奴は発光呪文と共に、一人はなれの墓地に侵入したではないか。
ここに眠る者といえば、この地を故郷とするものやこの地で望んで逝った者たちだ。
墓地として至ってごく一般的なものだが、墓地の内部は暗いうえにたいそう冷え切っていることが私を身震いさせた。
もっとも、その震えの原因が別にもあるのは言うまでもない・・・。

弟は軽い足取りで墓地洞窟のなかをたいまつ程度の光と共に進んで行った。
ここには死者しかいないというのに、あいつは一体何をするというんだ。
私は決して気付かれないかつ見失わない程度の距離を保ち、後に続いた。
通路のあちこちに安置している棺桶の横を用心深く通るたびに
幼い私の心臓の鼓動は速さを増す。

やがて弟はこの洞窟の中でも広い空間に出たようで、発光の呪文を、もう一段明るいものにし
足を止めた。すると、おびただしい数の棺桶がはっきりと姿をあらわした。

ここで一体何をするんだ。
私は不安と・・・変な期待(これはよくわからないが、何か弟の秘密を握ることができることへの期待
だったのかもしれない)とともに、岩場の陰に隠れ、奴の行動を見ることにした。
それからの奴の行動は、とうてい信じられないものであった。

奴は膝をつき、手前にある棺桶に手を伸ばすと、幼い手でその棺桶の木製の蓋を力いっぱいに
取り除き、中に手を突っ込み、もう数千年前の先人の茶白い頭蓋骨を取りだす。
そして、その頭蓋骨をうっとりと見つめ、愛おしそうに額に接吻した。

1785ki.jpg

僕はもうすぐ大学に行くけど、留年などせず戻ってくるよ。大学を卒業したら、また遊ぼうね。

それから弟は、その頭蓋骨を丁寧に桶に戻したかと思うと、今度はその近くにあった
別の棺桶に手を出し、まだ白骨化しきっていない死体の胴体を重そうに、しかし自分の子供でも
あるかのような手つきで起こしては、先ほどの頭蓋骨と同じようにその腐乱した額に接吻した。

その後も奴は、その空間にある棺桶一つ一つに同じ動作を繰り返していた。
私は身動きも、まばたきすらもできずに、奴の一連の動作を金縛りにかかったように凝視するしかなかった。

ああ、墓荒らしをし死体を愛でる……あいつはとうとう脳がやられたのか。
墓荒らしは殺人と同等で、発覚すれば幼子だろうが重罪に処せられる。
―いや、考えてみればその兆候は以前からあったように思う。奴は動物やモンスターの死体を楽しそうな顔でいじっていた。
最初はごく小さな虫や小動物だったが、近年はゴブリンやウォーターリーパーの死体にも手を出していた。
そしてその死体に魂を閉じ込めた。…そう、それは死霊術だ。

いったい奴はどこでこの術を身につけたのか?死霊術自体は大昔からあったが、それは魔族特有のもので
その方法は一切の謎に包まれている。これはどの図書館(私がのちに王宮に就職しこの世界最大の図書館を
隅から隅まで調べても死霊術に関する本などなかった)にもないはずだ。
仮にそのような本が発行されても検閲により削除されるのは間違いない。まず子供が手に入れられるものではないし理解もできまい。

まさかあいつは自分でゼロから術式を編み出したとでもいうのか。
いや、まさか。・・・でも、あいつならありえないともいえない。

死霊術は殺人よりも重罪で、死罪は免れない。それにもかかわらず、私は知っていたが見て見ぬふりをしていた。
気味が悪かったが、それが奴にとっての美徳ならば否定する気にもなれなかったからだ。
私には弟に借りがあったものだから。これはここでは言及しない。
しかしまさか同胞にまで手を出しているなど…信じられるはずもなかった。

その後、弟は60歳を過ぎた頃にとうとうこの研究が露呈し死刑判決を喰らった。思い出すとあの時期は私にとっても悪夢のようだった。
しかしその後「なぜか」国外追放へと変更された。一度下された判決が覆ったのは前代未聞だった。
いずれにせよ、いかにしてそうなったのか真相は闇の中である。

私よりはるかに両親に寵愛され、類稀なる頭脳を持ち、温厚で友人関係にもなんら困ってなどいないはずの弟が
なぜこの道に外れ、親を、恩師を、友人を、全てのエルフを裏切ったのか、今も私にはわからない。
あいつは生きているのか?それとも野たれ死んでいるのか。1000年以上も経っているものだから
もはや知るすべもない。

もっとも・・・会いたいとも思わないが。


  1. 2014/09/30(火) 00:14:40|
  2. 未分類